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シアトル・コイントス事件

シアトル・コイントス事件

カナダのバンクーバーに1ヶ月間英語を学びに行っていたときの出来事。

とある週末、時間があったので、人生初の「ミニ一人旅」を敢行しようと、国境を越えてアメリカのシアトルまでバスででかけることにしました。当時はイチローがシアトルマリナーズに入る前でしたし、何か特別に目的があったわけではありませんが、自らチケットを手配して、陸路で国境を越えるということが自分にとっては「大きな仕事」だと感じていました。

行きは国境も難なく通過し、無事シアトルへと到着。帰りはそのバス会社のオープンチケットを持っていたので、適当な便を選んで乗ることになっていました。とは言っても、観光したあとに選べるのは最終便だけだったのですが・・・。この時点で帰りの席をフィックスしていなかったことが、後々になって緊張の場面を招くとは分かっていませんでした。

港町シアトルの一日はとても晴れ渡って気持ちよく過ごせました。そして夕方、バスターミナルでバンクーバー行きの最終バスを待ちます。そこにようやくバスが入ってきました。

ん?バスにはすでにたくさんの乗客が乗っていました。なんとここはバスの始発場所ではなく、シアトルの各停留所で乗客を拾ったあとの最後のバス停だったようです!

運転手が降りてきて、すでにこのバスを指定して予約している人の名前が読み上げられて乗り込んでいきます。もちろん僕は予約した覚えもありませんし、名前が呼ばれるはずもありません。そしてバス停に残っているのは4名。次に案内されるのかと思いきや、運転手から衝撃の一言が。

「あと2席だから、2名は乗れません」

全身に緊張が走りました。このバスを逃したらシアトルからバンクーバーに帰れません。ホームステイでも心配されるでしょうし、翌日は学校には行けません。さらに、翌日の放課後には「スカイダイビング」の予約を入れている・・・。帰らないわけにはいきません。何より、何も分からないシアトルの夜に放り出されて、途方にくれてしまうでしょう・・・。

運転手はポケットからコインを取り出しました。「裏表のどちらかを当てた人から乗り込んでよし」と言ったような気がします。まさかこんな大事な局面でコイントスで決めるなんて・・・。今から思えば、フェアといえるかもしれませんが、当時はそんな「アメリカ」に完全にビビってしまいました。

最初のカナダ人2名は、2人ともはずれ。そして3番目に順番が回ってきました。もしこれではずせば、次に回ってくる可能性は低いでしょう。運転手のコインの動きをじっくりと見ながら(とはいってもぜんぜん見えませんが)、「裏(Tail)!」と渾身の一言。

アメリカのコインを知らなかったので、そのとき、当たりだったのか外れだったのかは分かりません。しかし、その運転手は無言でカナダの入国書類を手渡してくれました。そのまま胸の鼓動がおさまらないままバスへと乗り込み、無事その日のうちにバンクーバーのホームステイに帰り着くことができたのでした。

1999年8月

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